看護研究の指導する立場の考え方

看護研究指導のポイント

新しいもの(Originality)とは

研究に関する著書を見ると、必ず出てくるのが、研究は、新しいもの(オリジナリティ:0riginalityのあるもの)でなければならない・という言葉です。研究では、常に新しいものであることを要求しているのです。

 

しかし、初めから新しいもの(オリジナリティのあるもの)である研究をしようと考えていると、研究に手が着けられなくなります。そこで、最初のうちは、何でもいいから、とにかく研究して、終わったところで、新しいもの(オリジナリティのあるもの)であるか否かを確認すればよいのです。

 

新しいものであるか否かの確認には、次のような視点が役に立ちます。細かな点は、看護研究発表会での評価する方法評価の基準のところで確認してください。

  1. テーマにオリジナリティがあるか?今まで誰も取りあげていないようなテーマであれば、オリジナリティを主張できます。
  2. 仮説にオリジナリティがあるか?仮説は、まだ成立することが立証されていない新しい理論。新しい考え方ですから、研究の際の理論・考え方が新しければ、当然オリジナリティを主張できます。
  3. 方法にオリジナリティがあるか?研究の方法が、今までに行われていない新しい方法であると、オリジナリティを主張できます。むしろ、未知・未解決の問題を解決するためには、新しい方法を開発しなければならない場合のほうが多いのです。今まで通りの方法であると、今まで通りの結果が得られる場合のほうが多いのです。
  4. 実験方法にオリジナリティがあるか?実験の方法が新しければ、オリジナリティを主張できます。
  5. 調査方法にオリジナリティがあるか?調査の方法が新しければ、オリジナリティを主張できます。
  6. 実験材料にオリジナリティがあるか?実験の材料が新しければ、オリジナリティを主張できます。
  7. 調査対象にオリジナリティがあるか?調査の対象が新しければ、オリジナリティを主張できます。
  8. 結果にオリジナリティがあるか?方法までは、今までのものを踏襲してきても、そこで新しい結果が得られたときは、オリジナリティを主張できます。
  9. 考察にオリジナリティがあるか?得られた結果が、今まで通りのものでも、新しい視点から解釈して、今までとは異なる考察を行ったときには、オリジナリティを主張できます。
  10. 結論にオリジナリティがあるか?仮説との関係もありますが、この研究で得られた主張が、今までのものと異なるときには、結論としてのオリジナリティを主張できます。

研究のプロセスは的確か

研究を行うときには、学問的な要請に応じた論理的・科学的なものであると共に、倫理的・道徳的・道義的・社会的に是認されるものでなければなりません。純粋に学問的な興味から、研究に取り組むことも可能です。しかしそれが、自傷・他害の恐れがある結果と結びつく場合には、慎重になる必要があります。

 

特に、看護研究など研究の素材となったものが、人間である場合には、人権の尊重・プライバシィの尊重の面からの、慎重な計画が必要です。

 

臨床的には、患者さんは、看護研究の素材とはなりえても、看護研究の対象とすることには、疑問を感じます。

 

看護教育の現場での研究指導のポイント-ポイントの押さえ方と指導の方法

指導目標の設定はどうするか

看護研究の指導目標については、看護学校の教育目標との関連の中で、整合性のあるものとしなければ、学生が混乱するだけです。
まず、一般的指導目標を明確に設定し(GIO)、次に特殊行動目標(SBO)を、できるだけ具体的に立てます。

 

GIOは、SBOで展開する基盤となるものですから、学生達が到達可能な形で示す必要があります。

 

GIOとしては、次のものが考えられます。

  1. 研究とは何かを理解し、説明できる。
  2. 看護研究が、なぜ必要かを理解し、説明できる。
  3. 看護学的知識を、よりよく理解するための、研究的態度を身につける。
  4. 看護研究を行うために必要な、考え方や研究方法を理解し、説明できる。
  5. 論理性、科学性を身につけ、実際に活用できる。
  6. 看護研究活動に必要な、文献の検索・収集・読解・照合などの取り扱いを理解し、的確に処理できる。
  7. 研究論文を書くために必要な、一定の形式・文体・記述方法があることを理解し、説明・実践できる。
  8. 研究的なかかわり方の中で、追究すべき数多くの問題があることに気づくようになる。
  9. 追究すべき問題点に、さまざまな側面があることを知り、それらを分析できる。
  10. 問題解決のために必要な作業を、自ら決定できる。
  11. 研究論文作成のために必要な、データを集め、信頼性・妥当性の検討ができる。
  12. 自分で得たデータをもとに、論文としての形式を踏まえて、まとめることができる。
  13. 研究発表に必要な準備を行い、適切な発表ができる。
  14. 看護研究に取り組むことにより、看護の目がますます深まっていくことを知り、そのことを自らの体験として話すことができる。

SBOは、看護研究発表会での評価する方法評価の基準の中のものと重複するので、ここでは省略します。

 

指導目標のポイント

一般的指導目標(GIO)を達成するためには、個々のSBOとの関連もありますが、最も大切なことは、看護研究活動が、自らの内心の要求にしたがって行われるということです。

 

未知のものを安易に放置せず、具体的に解明せずにはいられないという、内面的な衝動に基づいて行われるのが、研究活動です。したがって、看護研究は、教わるものではなく、教えられるものでもなく、自らの創造的な活動であることを、正しく認識するように導く必要があります。

 

指導内容の検討

看護学生が、初めて研究に取り組むときには、何が何だかサッパリわからず、ただ無我夢中で仕上げてくるのが実態です。そのため、独りよがりな思い込象や、すでに定説として明らかにされているものに取り組むこともあります。

 

そのため、指導的な立場でかかわる際には、中身・内容の問題よりも、研究的な態度と、論理性・科学性などの、研究に必要な条件を満たしているか否かに、主眼を置くことが、大事なことになってきます。

 

評価の必要性

研究の評価は、取り組んだ研究活動とその成果が、どのような意義と意味と価値をもつのかを、明らかにすることです。いくら努力をしても、よい結果が得られていない場合には、それらの努力は、無駄な努力ということになります。

 

したがって、努力だけは、認めるけれども・・というのは、研究の評価の言葉になりません。適切な評価は、次の研究活動の動機づけになります。

 

 

看護師の現場での研究指導のポイント-ポイントの押さえ方と指導の方法

指導目標の設定はどうするか

看護学校を卒業して看護師としての場合には、看護研究活動に関する指導目標は、必要ありません。むしろ、指導目標という発想そのものが、誤りです。

 

新しく卒業したばかりで、仕事や職場に慣れず、基礎教育を受けただけで、臨床実務を知らず、組織・管理・方針・実態・人間関係・慣例などなどを知らない新卒の看謹婦に、卒後教育を行い、実務者として、中堅として、リーダーとして、臨床指導者として、看護教員として、幹部候補者として、管理者として育てていくのは必要なことです。

 

しかし、研究に関するかぎりは、全員が対等な立場です。研究論文の内容がよいものは、たとえ新卒の人がやったものであるとしても、よいのです。研究論文の内容がよくないものは、たとえベテランの人がやったものであるとしても、よくないのです。

 

新しい発想は、前例にこだわらず、過去のしがらみに縛られない、新しい人から生まれてくる場合のほうが、多いのです。

 

無知であるが故に犯す誤りは、指摘して正す必要があります。しかし、それは単に誤りを正すだけで、研究指導とは関係のないものです。組織の活動の一端として、看護研究に取り組桑、研究目標を設定することは可能です。

 

研究の指導目標は、指導を受ける必要があると判断された研究者に対して、指導者が、個々の研究者に対して立てればよいものです。

 

指導目標のポイント

指導者が、個々の研究者に対して立てる指導目標は、看護学校教育の場におけるものと、大きな違いはありません。しかし、もうすでに学生ではないのですから、一人前の専門職業人として、尊敬し、尊重し、敬意を表しながら、要求すべきことをキチンと要求する必要があります。

 

そのため、目標としては、次のものが考えられます。

  • 専門職業人として、研究とは何かを理解し、説明できる。
  • 看護研究と看護の専門性との関係を説明できる。
  • 看護理論と看護実務の関係を理解し、実務の根拠となった理論・考え方を整理して、説明できる。
  • 看護研究活動と、臨床業務を両立させることができる。
  • 論理的思考と科学的思考を生かして、実際に活用できる。
  • 看護研究活動に必要な、文献の検索・収集・読解・照合などを日常的に継続して行うことができる。
  • 研究論文を、一定の形式・文体・記述で書き、発表できる。
  • 看護関係の分野だけでなく、他の関連分野のものをも、総合的に活用できる。
  • 他の研究者の研究業績の是、非を、的確に判断し、具体的に説明できる。
指導内容の検討

臨床看護研究活動の、指導内容の検討を行う際には、研究者が行っている研究が、看護の世界でどのように位置づけられるか、特に、いろいろな看護理論とどのような関係にあるか、さらに一例の中で経験されたものが、一般化・法則化される可能性があるのか否かが、主たる着眼点になります。

 

小さな一つの研究から、思いがけない糸口をつかみ、新たな大きな問題解決へとつながっていくことは、しばしば経験することです。

 

評価の必要性

実際の現場で、最も大きな課題として残っているのは、1人1人の看護師が、研究を継続できず、単発で終わってしまうこと、研究に取り組む人が偏り、やる人はやるが、やらない人はやらないことなどが、あげられます。一度はみんな研究に取り組んだことはあるのに、なぜやらなくなるのかも、大きな課題かもしれません。

 

自分の行った研究を、正当に評価されないと、意欲を失います。講評と評価の際に、酷評が行われる場合が多いのではないかと思います。

 

評価のポイント

評価のポイントとしては、看護研究発表会での講評方法と共に、次の3点があげられます。

  1. 誉める

    :まず、誉めます、何かしら、誉めることのできる部分が、あるはずです。着眼点を誉め、テーマを誉め、アプローチを誉め、文献検索を誉め、仮説に至る過程を誉め、仮説を誉め、研究の計画を誉め、とにかく、誉めることが必要です。そのことが、次の研究の動機づけとなります。最大の誉め言葉は、実は言葉ではなく、盛大な、絶大なる拍手です。

  2. 注文する

    :全く完全な研究なら、何も注文することはありません。しかし、全く完全な研究など、めったにありません。何かしら欠点・欠陥があるはずです。そのときに、欠点・欠陥を厳しく指摘して、文句をつけるのは、ヤメテください。むしろ、欠点・欠陥の部分については、こうであってほしいと、注文する形をとるのです。誉められた上で注文されるのですから、ますますやる気になります。

  3. 示唆する

    :注文したら、ただそのまま放り出すのではなく、こうしてみたら.....と、示唆します。注文した部分は、それで解決できるはずですというものを示すのです。

講評と評価は行う際に、厳重に避けなければならないものがあります。それは、感想を述べることです。感想は、どうしても個人的な感情が入ります。個人的な感情は、研究とは、何の関係も無いものです。

 

評価の仕方と講師の選定
ステップアップするための評価

研究論文は、適切な評価を受けることが大きな意味をもちます。評価を受けた人が、続けて研究を行うと、次の論文は少しステップアップします。他の人が行った研究の評価を聴いていても、なかなか変化しません。
看護学校の場合だと、5年くらいかかって変化します。同じ過ちを繰り返すまいと思うのは、当事者だけで、他の人は、他人事のように聞いているからです。

 

看護実務に役に立つ評価

研究で得られた成果を、すぐに実務に役立てようとするのは、危険です。特に、症例研究で明らかにされたものは、患者さんの背景や状況が異なる
と、そのまま適用できないものが、たくさんあります。そのため、実務に役に立つ評価が、必要になります。看護実務に役に立つ評価というのは、発表された研究の基盤となった、理論・考え方を評価したものです。

 

講師選定のポイント

研究発表会に、講師をお招きすることもあると思います。看護研究の講評・評価を依頼する講師として、最もふさわしいのは、その道の権威者、つまり、看護界の先輩です。

 

講師として招くときは、その人の発想の仕方に、まず注目します看護的な発想で、看護上の問題を、看護的に解決するという発想をもった人を招いてください。病気のみに関心があるだけであったり、患者さんを対象と考えるような人は、看護研究の、大事な部分がわからない人と思えば、講師選定を間違えることはありません。看護を自分の問題と考え、対等な立場で論議を重ね、検討を加えることができる人を選ぶのが、コツです。

 

特に、患者さんやその家族の感情生活を注目する人を選ぶと、得るものがたくさんあると思います。