論文の書き方のポイント-論文と図表の書き方

論文の書き方にはある一定のポイントがあります。

 

ここでは、看謹研究の基本的考え方を中心に、看護論文の書き方と図表の書き方のポイントについて概説し、看護論文として必要な要素をまとめる方法について紹介しています。

 

 

研究論文を書き始める前に

看護研究を実施するにあたっては、いろいろな条件を考える必要があります。

 

それぞれの職場の条件、それぞれの立場の違い、それぞれの研究意欲の問題などなど、問題はさまざまです。

 

しかし、「研究のための条件が整わないから研究ができない」ということはありません。

 

研究を常時統けていなければ、自分の専門性を維持できなくなるからです。専門家には、「研究をしなくてもよい」ということはありません。

 

研究をしているから、自分の専門性を維持し、専門性を主張できるのです。

 

看護の専門家は、看護師です。したがって、すべての看護師が、看護研究に取り組んでいて当然なのです。

 

 

研究の進め方の確認

 

まず、研究の進め方を確認しておきます。研究の進め方を確認しておくことが、論文をまとめる際の重要な鍵を握っています。

 

研究の進め方を振り返って見ると、自分が何を書かなければならないのかがわかるのです。

 

研究の進め方を知っていると、すべての看護師が、容易に看護研究に取り組むことができるようになります。

 

取り組む順序は、次のようになります。

  1. 症例研究:主として、自分達がかかわった患者さんとの関係の中で、看護として何が展開され、それは、どのような理論・どのような考え方に基づいて展開されたのかが、検討・検索されます。いわば、看護過程の中での全体的な対応の研究です。

    その際には、「目標管理志向」であるか否かが、成否を分けます。一人一人の患者さんには、その患者さん固有の状況があります。その状況に、どのように対応し、どのような結果を得たのかが、問題になります。
    よい結果が得られますと、その対応がよいといえるのかどうかが、問題にされます。
    そして、その対応のもとになった理論・考え方が、他の患者さんに応用・展開が可能であるかどうかが、次の課題となるのです。このようにして、症例研究は、看護臨床の実務に直結した、状況対応規定研究です。

  2. 事例研究:症例研究を進めていく中で、特定の問題や事象に着目して追究を始めると、事例研究となります。着目した問題や事象が、未知・未解決なものである場合は、因子解明研究となります。

    また、その問題や事象が、どのような原因で生起し、どのような結果と関連しているのかを追究すると、因果関係解明研究となります。その問題や事象は、「このようなもののはずである。 」と、理論的な解答を先に出す形で仮説を立て、その仮説が成立するか否かの検証を行えば、仮説検証研究となります。その問題や事象がどのような状況であるかに着目すれば、状況解明研究となります。
    看護過程全般の考え方についてではなく、その問題や事象にかぎった状況対応規定研究も可能です。

  3. 実験研究:事例研究の中で、実験的に確かめなければ解答を得られないものに取り組むと、実験研究になります。

    さらに、今までにすでに定説になっているものを、実験的に確かめて、追認するという研究もあります。
    オリジナリティを主張することはできなくても、追試・再試として価値の高い研究です。取りあげたものによっては、因子解明研究・因果関係解明研究・仮説検証研究・状況解明研究・状況対応規定研究のどれにでもなります。

  4. 調査研究:演鐸的な方法ではなく、帰納的な方法で、基本的には、大数を問題にする場合に使われる方法です。取りあげた問題によっては、一例だけの調査でも、大きな価値を産む場合があります。

    問題の取りあげ方と処理の仕方によって、因子解明研究・因果関係解明研究・仮説検証研究・状況解明研究・状況対応規定研究のどれにでもなります。

  5. 文献研究:すでに追究され、発表された文献をもとに行う研究です。

    主として、総説・論説の形をとります。問題によっては、理論的な解答を出す意味での因子解明研究、理論的な解答を出す意味での因果関係解明研究、理論的な解答を出す意味での仮説検証研究(仮説を提示する研究) 、理論的な解答を出す意味での状況解明研究、理論的な解答を出す意味での状況対応規定研究となります。

 

レポートと研究論文の違い

 

レポートと研究論文には、本質的には大きな違いがあります。
しかし、レポートを書くための資料や情報の収集・整理・分析の方法は、研究論文を書く場合と違いはありません。

 

レポートと研究論文の、本質的に大きな違いとは、考察・結論があるか否かです。

 

レポートの場合は、事実の報告が求められています。レポートされた事実をもとに、考察し結論を出すのは、レポートを受け取った側の問題です。レポートする側は、事実をありのままに報告するのが役目です。

 

研究論文の場合には、レポートと同様に、事実をありのままに報告すると共に、その事実が示しているものを解釈・考察して、自分の判断をもとに結論を述べる必要があります。自分の判断をもとに述べられた結論は、研究として追究されたものに関する理論・考え方ということになります。

 

実験や調査を行って、その事実だけを報告するものは、実験報告や調査報告ではあっても、研究ではありません。

 

研究論文に要求されるもの

研究論文に要求されるものは、一般的ないい方をすれば、「論理的であること」、「科学的であること」、「新しいもの( O r i g i n a l なもの)であること」などです。ここでは、「科学的であること」について、簡単に見ていきます。

 

研究論文に必要なものは、事実に基づいた判断であり、判断を積み重ねながら、一定の理論・考え方を述べることです。

 

疑問文・感嘆文・命令文・祈り・願望などは、判断ではありません。そのため、疑問文・感嘆文・命令文・祈り・願望などを論文の中に書くと、判断を示していないと見なされ、研究論文として認められなくなります。

 

ただし、疑問文の形で問題提起したものに、判断を明確に示す形で答えているものは、認められます。

 

論文の結末が、個人的な決意表明と、個人的な願望を述べているものを、しばしば見かけます。これらの本文の部分は、個人的な決意表明、個人的な願望を述べるための前置きと見なされ、研究として認められなくなります。

 

たとえば、「この経験を今後の看護の中に生かしたい。 」などというのが、その代表的なものです。これは、まさに個人的な決意表明、個人的な願望です。判断の形で、「この経験を今後の看護の中に生かす必要がある。 」
とか、「この経験は今後の看護の中に生かせるはずである。 」となっていれば、判断を示したことになります。

 

情報の収集と整理と分析

情報の収集・整理・分析のポイントには、細かく見ていくと、数かぎりなくあります。

  1. 情報収集のポイント

    自分がどのような情報を必要としているのかを、自分で的確に把握し、認識しているのかが、最大のポイントです。
    情報は、まず文献に求めます。文献から得た情報だけでは不十分なときに、自分に必要な情報は、どのようにして得られるか、を考えます。自分に必要な情報を得るための方法として、実験や調査が行われる場合もあります。

  2. 情報整理のポイント

    自分の研究では、何を明らかにしたいのかを、自分で的確に把握し認識しているときに、情服の整理が簡単になります。自分の得た情報が、自分の研究の目的とどのような関係にあるのかを、まず考えます。
    統計学的な処理の方法も、研究の目的と、情報の種類によって、決まってきます。平均と標準偏差を求めるもの、相関係数を算出する必要があるもの、分散分析が必要なもの、一致度・独立性の検討など、さまざまです。

  3. 情報分析のポイント

    情報分析のポイントは、情報の意味を正しく読み取ることにあります。その情報が意味しているものと、自分の研究の目的との関係を正しく認識すると、情報分析を行うことが、容易になります。論文を書く際には、まず、要求されているものを正しく分析して、自分の行った研究との接点を明らかにします。
    口頭発表用演説原稿・集録用原稿・投稿用原稿などは、その全部が発表用原稿ということになります。発表用原稿を書く前に必要なのが、下書きである原著論文です。下書きである原著論文は、研究によって得られた知見の全部について、細かく詳しく書き込みます。下書きである原著論文をもとに、発表用原稿を作ります。
    その発表用原稿が、オリジナリティのある価値の高いものとして認められると、その学問分野での、学問的に意味のある原著論文として、認められます。

 

図表の書き方のポイント

 

図表は、文章で書かれているものを、視覚的に補うものです。
文章を読むだけでは、理解しにくいものを、直感的・直覚的に伝えるものです。

 

したがって、図表を描く前に、本文を文章で書いておくことが、必要になります。

 

しかし、研究を繰り返し行っていると、口頭発表の際に何を述べるかという、文章の部分が、頭の中だけで整理されますので、それをもとに図表を描き、さらにその図表を言語的・聴覚的に補うという発表準備の方法もあります。

 

抄録用原稿・集録用原稿・投稿用原稿などは、まず全体を文章で書き、必要な部分を図表で補うということになります。

 

図の中で、写真は内容の真実性の証明になり、説明図は内容の説明になり、グラフはデータの提示、論文内容の説明になります。

 

表の中で、表はデータの表示や論文内容の比較整理となり、列記は説明や論文内容の整理した表現となります。

 

図と、表には、提示した順に番号をつけ、何の図表であるかの説明を簡潔に示しておきます。図の場合にはその図の下に、表の場合にはその表の上に書きます。

  1. 方眼紙の利用

    図表を描く際に、方眼紙を利用すると、正確に綺麗に描けます。場合によっては、方眼グラフ用紙だけでなく、片対数グラフ用紙・両対数グラフ用紙・関数尺グラフ用紙などを使うと見やすくなる場合もあります。

  2. 目盛りの書き方

    目盛りは、図を理解するために必要な、最小限の情報ですい図は、理解することができません。図を囲む線の内側に、み、外側に数字を入れます。

  3. 単位の書き方

    目盛りの無目盛りを刻単位が暖昧であると、せっかくの図表も無意味なものになります。単位の書き方・略し方は、自己流にせず、一般に通用する標準的な方法にしたがう必要があります。

次は→看護研究論文の論文構成の狙いについて

 

 

     

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