看護研究論文のまとめ方-論文構成の狙いについて

論文構成−その狙い−

論文構成には、一定の型があります。それぞれの部分には、その狙いがあります。
それぞれの部分には、どのような狙いがあり、論文の中でどのような役割を果たしているのかを、正しく認識していると、まとめやすく、書きやすくなります。

 

症例研究の場合

 

症例研究は、看護研究の中の中心的なものです。どのような看護研究の成果も、症例に適用されることによって、看護に役立つか否かが検証されます。

 

症例研究によって看護研究の研究課題が発見され、いろいろな研究によってその解決案や解答が提示されると、症例研究によって、その解決案や解答の信頼性や妥当性が、確かめられるのです。そのため、症例研究の論文構成は、看護過程にそった形となります。しかし、それでも、研究論文としての形式を踏んでいる必要があります。

  1. 表紙の狙い

    表紙は、研究論文の顔です。顔には顔としての役割があります。
    表紙には、「研究の種別」、「論文題名(タイトル) 」、「( 必要なら)サブタイトル」、「研究者の氏名」、「研究者の所属」などの情報が盛り込まれます。
    「研究の種別」は、研究が、どのようなものであるかを示すものです。
    「論文題名(タイトル) 」は、論文の中身・内容を一言で表したものです。この「論文題名(タイトル) 」を見て、中身を読むか読まないかを決める場合がしばしばあります。
    「( 必要なら)サブタイトル」は、この研究のポイントを明示するためにつけられます。
    「研究者の氏名」は、この研究論文の責任の所在を明らかにするものです。
    「研究者の所属」は、研究者がどのような人であるかを、概括的に示すものです。それによって、読むか読まないかを決める場合もあります。これらのことを明確に示すのが、表紙の役割です。→「表紙」の具体的な書き方

  2. 目次の狙い

    目次は、論文内容を具体的に示すものであり、同時に論文内容が、どのように配列されているかを示すものです。目次構成をスムーズに行うことができる人は、論文をスラスラとまとめることができます。→「目次」の具体的な書き方

  3. 「はじめに」の狙い

    「はじめに」は、執筆者がこの論文に、何を書こうとしているのかを示すものです。したがって、「はじめに」を読むと、この論文の意図が読む人にわかるためのものです。
    いわば、「はじめに」は、この研究論文の入り口です。
    「はじめに」は、研究論文全体の中で、書くのが一番難しい部分です。「はじめに」が、簡潔明快に書かれていると、本文も簡潔明快であると期待できます。「はじめに」が、読み難く、理解し難いものであると、本文も読み難く、理解し難いものである場合が多いのです。→「はじめに」の具体的な書き方

  4. 「T.疾患の説明」の狙い

    「T.疾患の説明」は、患者さんがどのような疾患であるかを示すものです。
    この論文で追究しようとする看護理論や考え方は、看護過程を綿密に検討することによって得られます。その際に、重要な要素となるのが、「T.疾患の説明」なのです。
    同じ疾患であっても、それぞれの患者さんにおける現われ方は、さまざまです。 「T.疾患の説明」を明確に書いておくことによって、具体的なさまざまな対応を考えることができます。個別性に対応できるのも、「T.疾患の説明」によって、基本的なことが明らかにされているからです。
    疾患の説明は、よほど稀な、珍しいものでない場合には、発表の際に、時間的な理由、スペースの関係などで、省略される場合が多いのです。しかし、発表の際に省略されるとしても、発表用の原稿を作るための原著論文には、ガッチリ、シッカリと醤いておかなければなりません。
    疾患の説明を書く際には、常に看護との関係やつながりに配慮する必要があります。疾患そのものを追究するわけではありません。→「T.疾患の説明」の具体的な書き方

  5. 「U. 患者の紹介」の狙い

    「U. 患者の紹介」は、この研究で追究しようとする看護過程の、素材となった患者さんを、具体的に描写するものです。したがって、患者さんを、研究の対象として扱うことは、間違いです。この研究の真の対象は、看護過程の中における看護理論・考え方」なのですから。
    患者の紹介を書くときには、患者さんのプライバシーを犯すことのないように配慮する必要があります。そのため、実名は避け、伏せ字やイニシャルを使います。検査データなども、この論文に直接的に関係するもの以外は、極端な異常値にならないように注意しながら、わずかに変えます。
    患者の紹介を読めば、素材となった患者さんの身体像、生活像、社会像、精神像などが、把握できるようになるのを目的とします。そのためには、過去・現在・将来についての情報が必要です。→「U. 患者の紹介」の具体的な書き方

  6. 「V.看護の実際」の狙い

    「V.看護の実際」は、「T.疾患の説明」で明らかにされたような疾患にかかっている「U.患者の紹介」で明らかにされた患者さんに対して、どのような看護が展開されたのかを、具体的に提示する部分です。
    そのため、「看護の実際」には、他の研究における「問題の所在と仮説」、「方法および対象」、「結果」までが、一遍に提示されます。
    看護の実際は、他の研究者だけでなく、看護に携わるすべての人々にも貴重な資料となるものです。→ 「V.看護の実際」の具体的な書き方

  7. 「W.考察」の狙い

    「W.考察」は、「V.看護の実際」で提示された看護過程の中で、どのような理論・考え方が明らかになるのかを検討する部分です。考察は、 C o n s i d e r a t i o n であると同時に、 D i s c u s s i o n も行われます。それも、口頭で行う議論や吟味ではなく、文章上で行われるものです。
    考察でよくありがちなことで、感想・反省・峨悔などが書きたくなることがあります。このような感想・反省・餓悔などは、考察の中には必要ありません。→「W.考察」の具体的な書き方

  8. 「X.結論」の狙い

    「X.結論」は、この研究によって得られた理論・考え方を明確に主張する部分です。
    すべての研究には、必ず結論があるはずです。結論が無いのは、研究として未完であるか、研究として失敗したかのいずれかです。
    結論は、次の研究のための新たな仮説と見ることもできます。初めて主張された新しい結論が、追試・再試によって検証され、その信頼性・妥当性が追認されると、一般性・法則性を盤得して、1つの定説へとなっていきます。→ 「X.結論」の具体的な書き方

  9. 「まとめ」の狙い

    「まとめ」は、「この論文に、何を書いておいたのか」を示すものです。
    研究論文には、必ず「まとめ」を書く必要があります。「まとめ」は、「はじめに」に対応するものです。
    「まとめ」は、この研究論文の出口と見ることもできます。「はじめに」を読んで、「何を書こうとしているのか」を把握してから、「まとめ」を読むと、論文に一貫性・統一性・整合性があるか否かがわかります。
    もし、「はじめに」と「まとめ」の間にズレがあると、論文は、途中で迷走して、ねじれているものと判断できます。「まとめ」をアッサリと書ける人は、自分の行った研究をよく理解している人です。「まとめ」に要求される要素は、そのまま抄録に要求される要素です。そのため、この「まとめ」が、発表用原稿のもとになります。→「まとめ」の具体的な書き方

  10. 謝辞の狙い

    謝辞は、この研究にかかわってくださった方々に対する感謝の気持ちを表すものです。1 つのエチケットと考えればよいのです。→「謝辞」の具体的な書き方

  11. 文献リストの狙い

    文献リストは、この研究の学問的な根拠を示すものです。
    文献リストが正しく書かれていないと、それだけでこの論文の中身・内容を疑われることになります。文献リストで、最も注目される部分は、その文献の発行年です。
    したがって、文献は、新しいものから使う必要があります。同時に、他の研究者が、文献リストに謹かれている文献を手に入れることが可能なように、必要なことを漏らさず記載しておく必要があります。
    この文献リストまでが、研究論文として備えておかなければならない必要な要素です。→「文献リスト」の具体的な書き方

  12. 「おわりに」の狙い

    「おわりに」は、研究論文に必須の要素ではありません。むしろこれは、学習の過程にある看護学生専用と考えるべきです。
    学習の過程にある学生が、研究に取り組む中で、学生自身が何を感じ、何を考え、何に悩み、何を得たのか、そしてこれから、どうしようとするのかなどを、指導してくださった方々、教務の先生方に、個人的に報告する性質のものです。
    そのため、個人的な、感想・反省・餓悔・決意表明・願望などが書かれても構いません。→「おわりに」の具体的な書き方

調査研究・事例研究の場合

 

調査研究や事例研究は、症例研究のように、人との対応や、人との接し方が中心になることは無く、事柄や物についての追究が中心となります。

 

  1. 「T.問題の所在と仮説」の狙い

    「T.問題の所在と仮説」は、研究主題として取りあげたものを分析し、その中に、どのような問題点・疑問点・矛盾点が存在するのかを詳述し、それは、理論的には、どのように解決が可能であるのかを、述べる部分です。

  2. 問題の所在と仮説によって、研究課題が明確にされるのです。そのことによって、研究の価値の高低が決まってきます。
  3. 問題の所在と仮説を読むことによって、研究結果として何を得ようとするのかもわかるのです。特に、「T.問題の所在と仮説」の中では、仮説の提示が重大な役割を担っています。
  4. 「U.方法および対象」の狙い

    「U.方法および対象」は、仮説を検証するための方法論を提示する部分です。
    方法および対象の中に書かれる方法は、仮説を検証するための方法です。そのため、その方法を選択した根拠を具体的に示さなければなりません。
    書かれる対象も、仮説を検証するための対象です。そのため、その対象を選択した根拠を具体的に示さなければなりません。
    方法および対象が確かであることによって、研究が科学的なものとなります。
    方法が怪しく、対象が的確でない研究は、科学的であるとはいえないのです。

  5. 「V. 結果」の狙い

    「V. 結果」は、研究の結果として得られた基礎的なデータを提示する部分です。結果には、生のデータとして、実数を書くのが基本です。比率だけを提示しているのは、誤りです。
    結果を表示する際に、必要なものには、統計学的な処理を行い、その結果も添えます。統計学的な処理を行うと、逆に、信頼性を失う場合もありますので、注意する必要があります。
    結果として、実数を明示していない研究論文は、学問的な価値がありません。
    結果を提示する場合に、図や表で示す場合もあります。そのため、図や表での表し方の工夫も、大切な要素です。

実験的研究の場合

 

実験を用いた研究は、人為的に一定の条件を定めて、その条件の中での事物の変化を見るものです。したがって、条件設定が大きな意味をもちます。

  1. ( 1 ) 「U. 実験方法と実験材料」の狙い

    「U. 実験方法と実験材料」は、仮説を検証する方法として、実験を行った場合に、その条件を明示する役割をもっています。
    実験方法と実験材料の中の実験方法には、実験の条件を厳密に記述する必要があります。記述の目安としては、「その記述を読むだけで、他の研究者が、実験を再現できる」ということです。

     

    実験材料についても、厳密に記述する必要があります。特殊な材料を使用した場合には、入手方法まで書く必要が出てきます。
    実験方法と実験材料が確かであることが、科学的な研究のために必須の条件であり、実験のための実験であっては無意味です。特に、倫理的な配慮も必要な場合がありますので、注意が必要です。

  2. 「V.結果」の狙い

    「V.結果」は、実験によって得られたデータを、そのまま提示するのが基本です。