看謹研究の基本的考え方

基本的な考え方

研究とは、「よく調べ考えて真理をきわめること。」(広辞苑)です。そこには、「調べる」「考える」「真理をきわめる」という、3つの働きが要求されています。それは、看護研究でも同じです。

 

調べなければならないものが、2つあります。その1つは、研究のテーマとしたものの「内容」についてです。もう1つは「言葉」についてです。

 

調べる

内容を調べる

研究のきっかけになるものは、日常生活の中でしばしば出会う、
「オヤッ?」
「アレッ?」
「ハテナ?」
「なぜ?」
などです。普通の人には、必ず何かしら
「オヤッ?」
「アレッ?」
「ハテナ?」
「なぜ?」
と思うものがあります。これを、「気づき」といい替えても、「問題意識を抱く」といっても構いません。ところが、これが「無い」という人が、2種類います。さてどんな人でしょう?
(答:神様のような人ともう1人は?)
そしてこの、
「オヤッ?」
「アレッ?」
「ハテナ?」

「なぜ?」
と思ったものを、「知りたい」と思うか思わないかが、最初の分かれ道です。「知りたい」と思わない人は、それで終わりです。研究には結びつきません。その人に「知りたいか」と聞くと、「別に」と答えます。

 

「知りたいか」と聞かれる前に、自分から口に出す言葉は?
「知りたい」と思った人は、まず、「オヤッ?」と思ったものが、いったい何なのかを、文献で調べます。

 

自分で納得できる答を得ることができたら、それで終わりです。研究以前の問題です。納得できる答を、得ることができなかったら、それが研究テーマになるか否かを調べます。

 

このときも、文献で調べます。
「研究テーマになりそうだ」ということになったら、「仮説」を立てます。

 

「仮説」とは、「未知・未解決な問題を、合理的に説明するような仮定、つまり、新しい理論、新しい考え方です。適切な「仮説御を立てることができたら、研究は、半分終わったようなものです。

 

次は、自分で立てた「仮説をどのようにして検証するか」を調べます。新しい理論。新しい考え方が、成立することを証明するためには、どのような方法が、一番適切なのかを調べます。場合によっては、新しい方法を開発しなければなりません。

 

新しい問題を解決するには、新しい方法を必要とすることのほうが多いのです。

 

方法が決まったら、それを厳密・的確に駆使してデータを集めます。このときが、一番「研究している気分」になれるときです。

 

データが集まったら、他の研究者の得た結果と、照合、比較、検討して、自分の立てた仮説が、「成立したか否か」を確かめます。
ここでも文献が使われます。

 

そして、この研究の結果、それまで未知・未解決であった問題が、どのように解決されたかが、結論として述べられます。結論が無いものは、研究として認められません。結論を求めて追究をするのが研究だからです。どのような研究でも、その到達点がそれなりにあ
るはずだからです。

 

「言葉」を調べる

研究をするときに、「言葉」は、とても大切なものですから、大事にしなければなりません。専門語を誤用すると、それだけで論文の価値が無くなってしまいます。(「体交」は?「放治」は?「CP」は?)

 

言葉は、考えるときの道具であり、考えた結果を表現するものでもあります。言葉が、暖昧で、中途半端で、いいかげんなら、考え方も、暖昧で、中途半端で、いいかげんになります。また、表現も、暖味で、中途半端で、いいかげんになってしまうのです。

 

暖昧さを無くし、正確な言葉を、正しく使わなければなりません。辞書には、「熱発」という言葉が出ていますが、そのまま専門語としての「発熱」として使ってよいのでしょうか。

 

少なくとも、「体交」(広辞苑第三版に出ているタイコ文は、大公・大功・大巧・大江・大行・大孝・大効・大較・大綱・太公。太后。太閤。体腔。対向・対抗・対校・退行・退紅・退校・退耕・退黄・帯甲・帯鉤の23種類)
「放治」(広辞苑第三版に出ているホウチは、放置・法治・封地・
報知・鳳池の5種類)などという言葉は、無いのです。

 

専門用語をヘンな略語にする人は、自分が専門にしているものをおろそかにしている人であり、自分の専門性を自ら放棄している人です。

 

すでに存在している言葉で説明できるものを、わざわざヘンな言葉を作って説明しようとする人がいます。精神症状としての、造語症(Neologism)でなければいいですね。

 

言葉は、できるかぎり、わかりやすく、やさしいものがよいのです。理解が容易で、平易な言葉を、などと考える必要はありません。

 

「文章を難しく書くのは、自分がわかっていないことを、誤魔化すためだ」と言った人がいます。言葉には、言葉自体がマイナス・イメージを伝えるものがあります。自分が使おうとしている言葉が、どんなイメージをもっているのかを確かめることも、とても重要なことです。

 

手もとに辞書などを置いて、字だけでなく、それぞれの言葉がもつイメージ(プラス・イメージをもっているものか、それともマイナス・イメージをもっているものか)を、すぐに確かめる習慣がほしいのです。いまならスマホでも調べられますしね。

 

そして、できるかぎりプラス・イメージをもつ言葉だけを使うようにするのです。

 

考える

理詰めに考える

研究のときに要求される「考え方」は、科学的思考です。科学的思考をするためには、理詰めに考えなければなりません。

 

理詰めな考え方というのは、思考過程の中の、可能な考え方のすべてを、1つ残らず、細かく検討するものです。また、論理を飛曜させたり、思考過程に断絶があってはならないのです。

 

さらに、理詰めに考えるときには、「多分〜だろう」というような、根拠の無い、仮定・推定・推測・推論は許されません。思考の前提に、あやふやな判断があってはならないのです。

 

確実な前提をもとにしての推理は、認められます。理詰めに考える訓練を、しておく必要があります。どうすれば理詰めに考えることができるのかが、わからないままで、理詰めに考えようとしても無理です。

 

「「師長さん」の誕生日は、いつでしょう?」
この質問は、「師長さん」の誕生日を知らない人には、答えられ
ません。

 

このように、知らなければ答えられないようなものもあるのです。これは、考えても無駄なものです。考えるべき問題なのか、考えても無駄なものなのかを区別し、どちらであるかを見分けることも必要です。

 

知らなければ答えられないような問題を、クイズといいます。これに対して、答えは知らないが、考えれば答えを出せるような問題があります。

 

パズルです。理詰めに考える訓練に役立つのが、パズルです。

 

考えるスタミナ

研究の際に、考え始めたら、途中で止めることなく、答が出るまで考え続けなければなりません。

 

ところが、考えるスタミナの無い人が、意外に多いのです。そういう人は、すぐに「私、もうわかんない」とか「頭が痛くなっちゃう」とか言います。

 

考えるスタミナの無い人は、パズルでもやって、是非、考えるスタミナをつけておいてほしいものです。

 

 

研究の種類

研究のいろいろな分類法

白佐の分類法

白佐は、人文。社会科学関係の研究法に関する文献にあたって、さまざまな分類がなされているものを、次のように整理しています。

包括的分類

  1. 理論的研究・実証的研究・実験的研究・歴史的研究
  2. 調査研究・文献研究・実験研究・事例研究

段階的な分類

  1. 経験的研究・理論的研究・実験的研究
  2. 探索的研究・記述的研究・識別的研究・検証的研究
  3. 体験的研究・思弁的研究・科学的研究
  4. 歴史学的研究・調査的研究・実験的研究
  5. 基礎的研究・応用的研究・実践的研究

対照的な分類

  1. 独自的研究・学際的研究
  2. 科学的研究・実践的研究
  3. 分析的研究・実践的研究
  4. 理論的研究・実際的研究
  5. 個人研究・共同研究
  6. 多数研究・事例研究
  7. 量的研究・質的研究
  8. 法則定立的研究・個性記述的研究
  9. 目的的研究・結果的研究
  10. 演鐸的研究・帰納的研究
  11. 縦断的研究・横断的研究
  12. 条件分析的研究・基準的研究
  13. 実験的研究・生態学的研究
  14. 研究室的研究・実践的研究
  15. 実験室研究・現場研究

その他の分類(各専門分野ごとの分類)

  1. 教育哲学的研究・教育社会学的研究・教育心理学的研究・その他(教育)
  2. 幼児の研究・両親の研究・環境の研究・保育技術の研究・その他(保育)
  3. 看護的援助の研究・看護教育の研究・看護管理の研究・その他(看護)
  4. 学生研究・卒業研究など
ドナ・ディアーの分類法

ここでは、ドナ・ディアー[Diers、Dの分類方法にしたがって、簡単に説明します。

  1. 因子を分離し、命名する研究(因子解明的研究)

    「何であるか」が、わかっていない因子を解明して、「それは、これこれこういうものである。」と説明する研究です。未知の因子が解明されて、既知の因子に変わります。その説明は、今まで未知であった因子を既知にする理論です。

  2. 因子を関係づける研究(因果関係解明的研究)いろいろな因子は、何が原因となって生じたのか、その因子が存在することによって、どのような結果を生じるのか、などなどの因果関係を解明していく研究です。単純に関数的に変化するものもあれば、相関関係の高いものも低いものもあります。
  3. 状況を関係づける研究(状況解明的研究)

    いろいろな因子が集まると、1つの状況ができあがります。その状況は、個々の因子の総和ではなく、独特なものとなります。いろいろな因子を分析するだけではなく、その状況の力動的な関係をも解明していくのが、この研究です。

  4. 状況を規定する研究(状況対応規定的研究)

    一定の状況には、それなりの対応の仕方があります。状況を解明する研究によって、状況が判明したら、その状況にどのように対応するのかを明らかにしていくのが、この状況対応規定的研究です。看護研究の中では、最も大切な研究です。特に、臨床的に具体的な対応を考えるときには、重要な役割を占めます。

  5. 仮説検証的研究

    未知・未解決・不合理なままで残されていたもの、あるいは、新しい分野として生じてきたものに、合理的な説明となるような仮定をしてみて、それを理論構成し、できあがったものを仮説とした上で、その仮説が成立するか否かを確かめていく研究です。まず理論的な解答を考え出すところが、鍵を握ります。

 

いずれにしても、研究では、理論・考え方を扱います。理論・考え方を扱っていないものは、研究とは認められません。

 

因子解明的研究は、それまで未知であった因子を説明する理論を見つけ出すものです。

 

因果関係解明的研究は、因果関係を説明する理論を見つけ出すものです。

 

状況解明的研究は、一定の状況を説明する理論を見つけ出すものです。

 

状況対応規定的研究は、その状況に、どのように対応するのが合理的であり、効果的であり、正しいのかを規定する理論を見つけ出す研究です。

 

仮説検証研究は、未知・未解決・不合理、あるいは、新しい分野のものに、合理的な説明をすることで、理論的な解答を出すことになります。

 

いずれも、理論・考え方を明らかにするものです理論・考え方を追究することによって、研究となります。

 

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