一般の人に、老人ぼけとはどのようなものか、という問いかけに対して、その答えを整理すると次のようなものが挙げられています。
第1は、「極端に忘れる」という記憶面のことです。
これについては、
- 忘れっぽくなった。
- ご飯を食べても10分もすると、まだ食べてないと要求する。
- 自分の年齢や住所さえ忘れ、自分が結婚したことや子供のことまで忘れる。
などがあります。
第2は、「頭が悪くなってきた」という表現で、知的能力の低下がいわれます。
これについては
- 物わかりが悪い
- とんちんかんなことを言う
- 簡単なことをきいても答えられない
- 適切な判断ができない
- まちがいが多く、それに気づかない
などです。
第3は、「人柄のレベルが低下した感じ」というなかで、人格面についていわれます。
- 頼りなくなった
- だらしがない
- 興味や関心がなくなった
- はりのない生活をしている
- まとまりが悪い
- 深刻・真剣味がない
- 人としてのた力ざがはずれた感じ
- してはいけないことも平気でする
- 自覚力苛ない
などといわれます。
第4は、「にぶくなった」と表現されるような、感情面のいろいろな変化が挙げられます。
それは
- ぼさっとした顔つき、
- しまらない
- 大ざっぱになった
- 細かい心づかいがなくなってきた
- あまり悩まない
- 反応がない
- 幼稚じみてきた
などです。
第5は、「今までのその人にそぐわないことをする」というような行動面の問題です。
それは
- 変な間違いをする
- 人違いや勘違いの言動
- 目的不明の行動をする
- うろうろ歩きの徘徊や変な所へ行く
- 習慣的にやっていたこともできなくなった
- 洗面や便所へも行けない
- 自宅への帰り道もわからない
- つまらないことを言う
- くだらないものを大切に持っている
などですね。
このようなものの総合を、一般の人たちは痴呆と把握しているようで、これは看護師の仕事をしているのと同じように、実際的で正しいものと思います。ほとんどの老人痴呆は2種類に分けられます。
痴呆老人の欠点や欠陥など、悪い点のみに着目してゆくと、その老人は限りなく困りもので厄介者で、ときには一緒に住みがたいようにも思われたりします。
これのみにこだわって終始すると、痴呆老人の治療やケアへの取り組みは難しくて、壁にぶつかりゆきづまります。むしろその老人がそれでもなおもっているよい点の着目や利用がケアのうえでは必要で、道がひらけてきます。
看護師は、痴呆老人と日常生活をともにして幕らしてみていると、彼らは痴呆というハンディキャップをもちながらも、そのなかで何とか生きようと一生懸命に努力している姿、あるいはそれで困惑している姿として認められます。
だから、彼らの生き方(態度)を知って、そのこころ(心理)にそって援助し指導することが、認知症老人のケアの中心と考えられますね。