季節の移り変わりというのは、どこかにスイッチがあるわけではなく、いつの間にか訪れているものですね。でも、ナースには「ON」「OFF」のスイッチがあるのです。
看護師の勤務中はONのモードになっていなければいけない?
私が就職して間もなく、師長から言われたことがあります。
「8時間は責任を持って仕事に取り組むこと」この8時間というのは、勤務時間のことですね。
その当時の、私の病院は3交代制をとっていたので、各勤務帯は8時間ということになります。その勤務時間中は、ナースのスイッチが完全にONになっていなければならないということなのです。
当たり前と言ってしまえばそれまでなのですが、この言葉にはもっと深い意味があったのです。
看護学生の時は、実習から帰ると緊張感から解放され、つかの間の安堵感に包まれていたものでした。でも、その後にはおびただしい量の記録物との闘いが待っていたわけですよね。しかし、看護師として就職するとそのすべてを勤務時間内でこなすことが求められるのです。
確かに、周りの先輩スタッフと相談しながら進めることはできます。でも、複数の患者さんそれぞれに展開していかなければなりません。量をこなさなければいけないという意味で、労力を要します。
また、プライマリー制といえども、学生の頃のように「自分の担当患者さん以外は看られません」とは言っていられませんし、休暇明けともなれば浦島太郎状態になってしまうこともあります。
情報共有のためのワークシート
そこで、情報を共有し合い、具体的なケアにまで展開し、かつ誰が行ってもケアの質に差が生じないようにすることが大切になります。
一定のケアを患者さんに提供できるようにワークシートというものが作成されているのです。ワークシートには、タイムスケジュールや、医師からの指示が書かれています。
これに沿って動けば、それなりに業務としてのノルマは達成できてしまうのです。そう言う意味で、ナースという仕事は、ただ単に業務をこなすことだけを考えれば、いくらでも簡単にすませることができます。怖いことですが......。
ですが、ナース本来の仕事とは、臨床実習を経験されたほとんどの方なら分かると思いますが、患者さんからの情報をアセスメントし、看護計画を立案して実施します。
さらに、計画をしてまたフィードバックという具合に、そこに患者さんがいる限り繰り返されます。決して単純な作業ではなく流動的なものでもありますよね。師長の言葉は、それが大きな落とし穴にもなるということを言っていたのかもしれません。
ナースの仕事ONとOFFははっきりしない
堅苫しいことを語してしまいましたが、看護師の仕事のスイッチというのは、いつONになって、いつOFFになるのでしょうか。
外見から考えてみると、ONは白衣を身につけた時、OFFは私服に戻った時と言えるでしょうね。実際に自分自身でも気分的にそう思えるときもありますよね。
しかし、そんな単純なことではなさそうです。
例えば前日の勤務で、翌日にたくさんの検査介助があることが分かっていれば、白衣に袖を通す前にその日の段取りが頭の中を駆け巡っていますね。
患者さんのニードにうまく応えられなかったり、失敗をしてしまった時の、帰り道では、一人反省会の場と化します。外見上は素の自分に戻っていても、心の中では白衣を脱ぎきれていないのですよね。
それがいいのか悪いのかは、はっきり言って分かりません。素の自分の部分とナースの部分は、常に私の中に同居しています。そしてその比率は、シーソーのようにいつも変化しています。
患者さんと向き合っている時でも、ひょっこり素の部分が顔を出し、看護師の自分にチャチャを入れてくることがあます。就職当初は、素の自分が姿を現すことは少なかったのですが、最近は活躍の場が増えてきています。
それはいったい、何を意味するのでしょうか......。私という人間ができる看護をしていこう、私にしかできない看護があるのかもしれない、そう思えるようになった証なのでしょうか。
悩みが大きいなら看護師を離れる方法もありかも
実際のところ、素の自分というものが充実していないと、看護師としての自分と素の自分とのスイッチはうまく作動してくれませんね。
献身的なイメージの強い看護職は、何かと犠牲を強いられるからかもしれません。変則的な勤務による肉体的な犠牲もさることながら、精神面での犠牲も大きいものですよね。
そんな時は、思い切りスイッチをOFFにするしかありません。そう、素の自分にとことん付き合うのです。ナースである自分から離れることは、決して逃げることではありません。かえって新しい気持ちで仕事に向かう活力になるのです。
看護師として仕事を続けるための勉強はもちろん大切ですが、それと同時に一度「ナースから離れる」自分なりの方法もまた、必要になります。
それは何も、難しいことではありません。自分の好きなこと、やりたいことにどっぷりと浸かってしまいましょう。
私の中のナースのスイッチは、実にあいまいです。それでも私は、今日も知らず知らずのうちにナースのスイッチを入れています。
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